働きづらさ

聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方に向いてる仕事とは?仕事での対処法や支援も解説

「聞こえているのに内容が理解できない」
「耳からの情報を覚えられない」

「聴覚情報処理障害(LiD/APD)」は見た目では分かりにくい特性であるため、周囲に理解されにくく、「ちゃんと聞いていない」「集中力が足りない」と誤解されてしまうことがあります。

特に仕事では、口頭指示や電話対応など「耳からの情報」を扱う場面が多く、働きづらさを感じやすい障害です。

本記事では

  • 聴覚情報処理障害と仕事で困りやすいこと
  • 聴覚情報処理障害の方に向いている仕事や仕事で使える対処法
  • 利用できる就労支援や相談先

について詳しく解説します。
この記事が、あなたに合った働き方を見つけるきっかけになれば幸いです。

 

 聴覚情報処理障害(LiD/APD)とは?原因や特徴について

聴覚情報処理障害のイメージ

「聴覚情報処理障害(LiD:Listening difficulties / APD:Auditory Processing Disorder)」とは、一般的な聴力検査では異常が見られないにもかかわらず、聞いた音声を脳でうまく処理できない状態を指します。音は聞こえていても、言葉として理解しづらいことが特徴です。

日本では近年になって知られるようになり、大人になってはじめて分かったという方も少なくありません。一般的な聴力検査では異常が見つからないことから、聴覚情報処理障害のみを理由に、障害者手帳の交付や障害福祉サービスの利用に直結しないケースもあります。

ここからは、聴覚情報処理障害の特徴や原因、主な症状についてより詳しく解説します。

聞こえているのに聞き取れない障害

聴覚情報処理障害では「聞こえているのに聞き取れない」という特徴があります。

これは、耳で受け取った音声情報を脳の中で整理し、意味として理解する過程に困難が生じているためだと考えられています。

例えば、静かな場所では問題なく会話できる方でも、人が多い場所や雑音のある環境になると、急に会話が理解できなくなることがあります。飲食店やオフィス、複数人での会話などでは、必要な音声だけを聞き分けることが難しく、「音は聞こえるのに内容が分からない」という状態になりやすいのです。

また、聴覚情報処理障害の方は会話を理解するために多くの集中力を使う傾向があります。そのため、長時間の会話や会議の後に強い疲労感を感じたり、聞き取りに集中しすぎて内容を覚えられなかったりする場合もあります。

仕事では、「電話対応が聞き取れない」「口頭指示を覚えられない」「会議についていけない」といった困りごとにつながりやすく、自信を失ってしまう原因になることもあります。

聴覚情報処理障害の原因

聴覚情報処理障害の原因については、現在も研究が進められている段階であり、はっきりとした原因は完全には解明されていません。

ただし、いくつかの要因が関係している可能性があるとされています。

例えば、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などの発達障害特性との関連が指摘されているほか、ワーキングメモリや注意機能、言語理解などの認知機能が関係している場合もあると考えられています。

ストレスや疲労、睡眠不足などによって、聞き取りづらさが強くなる場合もあり、疲れている日や緊張している場面では、普段より聞き取りづらさを感じることもあります。

聴覚情報処理障害の主な症状

聴覚情報処理障害には個人差がありますが、代表的なものとして以下のような症状が挙げられます。

  • 似た音を聞き分けるのが難しい
  • 長い説明を覚えることが難しい
  • 雑音のある環境だと会話を聞き取れない
  • 話された内容を何度も聞き返してしまう

など

日常生活や職場では、会話についていけなくなったり、長い説明だと内容を整理できなかったりするといった困りごとが起こりやすくなります。

このように、聴覚情報処理障害は単なる「聞こえ」の問題ではなく、仕事や対人関係、日常生活全体に影響を及ぼす可能性のある障害です。

症状から難聴と混同される場合も少なくありません。しかし、難聴は耳の器官自体に問題があることが原因である一方、聴覚情報処理障害は耳の機能に異常が見つからないことが多いという違いがあります。

ただし、聞き取りづらさの背景には感音難聴など別の要因が関係している場合もあるため、気になる症状がある場合は自己判断せず、医療機関で相談することが大切です。

参考:LiD/APDって何?|国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究プロジェクト公式サイト

聴覚情報処理障害の方が仕事で困ること

聴覚情報処理障害の方は、「聞き取ること」に困難を感じやすい傾向があります。

職場では指示や会議、電話対応など、口頭で情報を受け取る機会が多いため、聴覚情報処理障害の特性による困りごとが表面化しやすくなります。

ここからは、聴覚情報処理障害の方が仕事で困りやすい代表的な場面について解説します。

 電話の声が聞き取れない

聴覚情報処理障害の方が特に苦手意識を持ちやすい業務のひとつが電話対応です。
電話では、相手の声だけを頼りに会話を進めなければなりません。しかし、聴覚情報処理障害の方にとっては、音声だけで情報を正確に聞き取ることが非常に大きな負担になる場合があります。

対面であれば、相手の表情や口の動き、ジェスチャーなど視覚的な情報から内容を補うことができます。しかし、電話ではそれらの情報が一切なく、機械を通した音声は聞き取りづらいこともあり、周囲の雑音が重なってより内容理解が難しくなることがあります。

そのため、

「相手の名前が聞き取れない」
「会社名や数字を間違えてしまう」
「聞き返しても理解できず焦ってしまう」

といった困りごとが起こりやすいです。

また、電話はその場で即座に対応しなければならないというプレッシャーもあります。聞き返すことへの不安や、「また失敗するかもしれない」という緊張感から、電話そのものに強い苦手意識を持ってしまう方も少なくありません。

仕事によっては電話対応が避けられない場合もあるため、電話が原因で仕事を続けることがつらくなるケースもあります。

 口頭指示を覚えられない

聴覚情報処理障害の方は、耳から入った情報を一時的に保持し、整理することに難しさを感じることもあります。

そのため、口頭だけで指示を受けた際は、

「内容を途中で忘れてしまう」
「複数の指示を同時に理解できない」
「何をすればよいか分からなくなる」

といった状態になりやすいです。

特に職場では、忙しい環境の中で素早く指示が出されることも多く、一度に大量の情報を処理しなければならない場面があります。

例えば、「この資料をコピーして、○○さんに渡して、そのあと会議室を準備しておいて」といった複数工程の指示を受けると、途中で内容が抜け落ちてしまうことがあります。

本人は真剣に聞いているにもかかわらず、周囲からは「説明を聞いていない」「注意力がない」と誤解されやすいため、自信を失ってしまう原因にもなります。

また、聞き返しづらい空気がある職場では、内容が分からないまま作業を進めてしまい、結果的にミスにつながるケースも少なくありません。

会議や雑談についていけない

会議や雑談など複数人が話す場面では、聴覚情報処理障害の方は情報整理に大きな負担を感じやすくなります。誰の声を優先して聞けばよいか分からなくなり、会話の流れについていけなくなることもあります。

また、会議では、一人ずつ順番に話すとは限りません。話題が急に変わったり、複数人が同時に発言したりすることで、誰が何を話しているのか分からないという状態になってしまうことがあります。

周囲の資料をめくる音やキーボード音、空調音なども同時に入ってくるため、必要な音声だけに集中することが難しくなる場合があります。その結果、会議内容が頭に入らず、途中から話についていけなくなることがあります。

また、職場の雑談や飲み会などでも同じような悩みを抱える方は少なくありません。周囲が楽しそうに会話していても、話の内容がうまく理解できず、孤立感を抱いてしまうことがあります。

こうした経験が積み重なることで、「人と話すのが怖い」「会議が苦痛」と感じるようになるケースもあります。

騒がしい環境だと集中できない

聴覚情報処理障害の方は、周囲の音の影響を受けやすい傾向があります。

例えば、以下のような音が同時に入ってくる環境では、必要な音声との区別が難しくなり、集中力が大きく低下してしまうおそれがあります。

  • 人の話し声
  • 電話の着信音
  • キーボード音
  • コピー機の音
  • BGM

など

特に、最近増えているオープンオフィスは、人の出入りや会話が多く、疲労感を抱えやすい環境になりがちです。

飲食店や工場、コールセンターなど、常に音が多い職場でも、脳が耳から聞こえてくる情報の処理に疲れてしまい、通常以上にエネルギーを消耗してしまう場合があります。

その結果、集中力が続かず些細なミスが増えるといった状態につながることがあります。中には、仕事が終わるころには疲労でぐったりとなる方もいるでしょう。

このように、聴覚情報処理障害の方は、「耳から情報を受け取ること」が中心となる職場環境で大きな負担を感じやすい傾向があります。

しかし、仕事内容や環境、周囲の理解によって働きやすさは大きく変わります。

次章では、聴覚情報処理障害の方に向いている仕事や、働きやすい職場の特徴について詳しく解説していきます。

参考:聞き取り困難(LiD)/聴覚情報処理障害(APD)ってなに?|LiD/APDマーク公式サイト

聴覚情報処理障害の方に向いている仕事とは?

向いている仕事のイメージ

聴覚情報処理障害の方は、「耳から情報を受け取ること」に負担を感じやすいため、仕事選びでは働く環境との相性が重要です。

実際には、能力の問題ではなく、口頭中心の業務や騒がしい環境によって働きづらさを感じているケースも少なくありません。一方で、文字でのやり取りが多い仕事や、一人で集中しやすい環境では力を発揮しやすい方もいます。

ここからは、聴覚情報処理障害の方が比較的働きやすいとされる仕事について紹介します。

一般事務・データ入力

一般事務やデータ入力は、聴覚情報処理障害の方に向いている仕事として挙げられることがあります。

事務職は、パソコンを使った入力作業や書類整理など、視覚情報を中心に進められる業務が多い特徴があります。また、仕事内容がある程度パターン化されている場合も多く、一度業務を覚えると安定して取り組みやすい仕事です。

データ入力業務も、決められた内容を正確に入力していく仕事が多いため、一人で集中して作業しやすいです。

メールやチャット中心でやり取りができ、電話対応が少ない職場環境であれば、働きやすさを感じやすいでしょう。

一方で、電話対応が多い職場や、頻繁に口頭指示が飛び交う環境では負担が大きくなるおそれがあります。そのため、仕事内容だけではなく職場環境にも注意して選びましょう。

 Webライター・校正

Webライターや校正など、文章を扱う仕事も聴覚情報処理障害の方と相性が良い場合があります。

これらの仕事は、会話中心ではなく「読む・書く」といった視覚情報を中心に進められるため、耳から情報を処理する負担を減らしやすい特徴があります。自分のペースで文章を確認しながら作業できるため、文字なら情報を整理できるという方には働きやすい仕事になりやすいでしょう。

近年はリモートワークを導入している企業も増えており、チャットやメールを使ったコミュニケーションが主流になっている職場も少なくありません。在宅勤務であれば周囲の雑音を減らしやすいため、自分が集中できる環境を整えられる点も大きなメリットです。

IT・プログラミング関連

IT業界やプログラミング関連の仕事も、聴覚情報処理障害の方に向いている場合があります。

エンジニアやプログラマーの仕事は、パソコンを使った作業が中心です。仕事内容は論理的で、手順やルールが明確な場合も多いため、曖昧な指示が苦手な方でも取り組みやすいケースがあります。

近年では、「Slack」「Chatwork」「Teams」といったチャットツールを活用し、文章ベースで業務を進める企業も増えています。口頭でのやり取りが比較的少ない環境であれば、働きやすさを感じることができるでしょう。

ただし、IT業界は専門知識の学習が必要になるため、自分の興味や適性も含めて検討することが大切です。

デザイン・クリエイティブ職

デザイナーやイラストレーター、動画編集などのクリエイティブ職も、聴覚情報処理障害の方に向いているケースがあります。

これらの仕事は、一人で集中して制作を進める時間が比較的長く、自分のペースで作業しやすい特徴があります。

また、「成果物」で評価される傾向が強いため、会話の得意・不得意だけで能力を判断されにくい点も特徴です。

特に、以下のような方には適性がある場合があります。

  • 静かな環境で集中したい
  • 視覚的な作業が得意
  • 細かい作業に集中できる

近年ではフリーランスや在宅ワークなど、多様な働き方も広がっているため、自分に合った環境を選びやすい仕事でもあります。

軽作業

軽作業も、聴覚情報処理障害の方に向いている仕事として挙げられます。

例えば、以下のような作業は手順が明確で、一人で完結しやすい業務とされています。

  • 商品の梱包
  • 仕分け作業
  • 検品
  • 清掃業務

これらの仕事はコミュニケーション量が比較的少なく、一人で黙々と作業できる職場もあります。そのため、会話による負担も少なく、働きやすい環境になることがあります。

ただし、工場など騒音が大きい環境では疲れやすくなる場合もあるため、事前に働きやすい環境であるか確認しておくことが大切です。

ここで紹介した仕事は、あくまで一例です。聴覚情報処理障害には個人差があるため、必ずしもここで紹介されていない仕事が向いていないとは限りません。ただし、仕事を選ぶ際は、仕事内容や職場環境が自身にとって負担にならないかを確認するようにしましょう。

聴覚情報処理障害の方が仕事を続けるための対処法

聴覚情報処理障害の方が仕事を続けるための対処法

仕事内容や職場環境に注意しても、「聞き取れない」「内容を覚えにくい」といった困りごとが起こる可能性があります。

しかし、聴覚情報処理障害は工夫や環境調整によって負担を軽減しやすくもあります。実際に、働き方や情報共有の方法を変えることで、仕事がしやすくなるケースも少なくありません。

困り方には個人差があるため、自分の特性に合った対策を見つけることが大切です。また、職場や周囲の方に症状について共有することで、必要なサポートを受けやすくなります。

ここからは、聴覚情報処理障害の方が仕事を続けやすくするための具体的な対処法を紹介します。

指示を文字で伝えてもらう

聴覚情報処理障害の方にとって、もっとも効果的な対策のひとつが「口頭だけでやり取りをしないこと」です。

耳から入った情報は、その場では理解できたように感じても、後から抜け落ちてしまうことがあります。そのため、口頭だけで指示を受けると、何をすればよいのか分からないという状況が起こりやすくなります。

そこで有効なのが、メールやチャット、メモなどを活用して“文字情報”として残してもらう方法です。

例えば、「あとでチャットでも送っていただけますか?」「メモを取りながら確認してもいいですか?」と相談することで、後から内容を見返せるようになります。文字で確認できる状態にしておくことで、聞き漏らしや記憶違いによるミスを減らしやすくなるでしょう。

また、口頭説明だけでは理解しづらい場合でも、文章なら自分のペースで整理しながら確認できるため、安心感につながる方も多くいます。

メモやチャットを活用する

聴覚情報処理障害の方は、「聞いた瞬間に内容を処理すること」に負担を感じやすい傾向があります。そのため、仕事中は積極的にメモを取る習慣を作ることが大切です。

特に以下のようなことは、できるだけその場で記録しておくと安心です。

  • やることリスト
  • 会議内容
  • 口頭指示
  • 期限や時間

また、最近ではスマートフォンやパソコンで使えるToDoアプリやメモアプリも増えており、紙のメモだと管理しづらいという方でも活用しやすくなっています。

職場でチャットツールを導入している場合は、できるだけチャットでやり取りを行うことで、後から内容を確認しやすくなります。

聴覚情報処理障害の方の中には、「口頭だと理解が追いつかないが文字なら整理できる」という方も多くいます。そのため、見て確認できる環境を増やすことで、仕事を安心して進めやすくなるでしょう。

字幕・文字起こしツールを使う

近年では、音声をリアルタイムで文字化できるツールも増えています。

例えば、オンライン会議ツールの字幕機能や音声文字起こしアプリ、AI議事録ツールなどを活用することで、会議や会話の内容を後から確認しやすくなります。

聴覚情報処理障害の方は、話の聞き漏らしに強い不安を感じやすい傾向があります。しかし、文字として内容が残っていれば、あとで確認できるという安心感につながります。

また、オンライン会議では字幕機能をオンにすることで、耳だけではなく目からも情報を補えるようになります。

最近では、スマートフォンでも使いやすい無料アプリが増えているため、自分に合ったツールを探してみるのもよいでしょう。

静かな環境で作業する

聴覚情報処理障害の方は、周囲の音の影響を受けやすいため、できるだけ集中しやすい環境を作ることも重要です。

例えば、以下のような工夫をすることにより、聞き取りやすさが改善する場合があります。

  • 人通りの少ない席へ移動する
  • 会議室を使わせてもらう
  • 在宅勤務を活用する
  • パーテーションを利用する

特に、最近は在宅勤務やテレワークを導入する企業も増えているため、「自宅のほうが集中しやすい」という方にとっては働きやすい環境を作りやすくなっています。

また、職場によっては座席変更や業務調整などの配慮を受けられる場合もあります。「どのような環境だと困りやすいのか」を整理して伝えることで、適切な配慮につながりやすくなるでしょう。

ノイズキャンセリングイヤホンを活用する

聴覚情報処理障害の方にとって周囲の雑音への対策は、安心して仕事を進めるうえで重要なポイントです。

聴覚情報処理障害の方は、必要な音声だけを聞き分けることが苦手な場合があります。そのため、周囲の雑音が多い環境では、脳が大量の音を処理しようとして疲れやすくなります。

そこで活用できるとされているのが、ノイズキャンセリングイヤホンです。

ノイズキャンセリング機能を使うことで、周囲の雑音や話し声を軽減するため、必要な音に集中しやすくなる場合があります。特にオープンオフィスやカフェのような騒がしい環境では、疲労を抑えることも期待できます。

ただし、ノイズキャンセリングイヤホンは、効果の感じ方について個人差が大きいです。また、周囲の声も聞き取りにくくなる場合があるため、人と会話する場面での利用には注意が必要です。

職場によってはイヤホン使用にルールがある場合もあるため、事前に相談しておくとよいでしょう。

参考:対処法-人とのかかわり・日常の工夫|国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究プロジェクト公式サイト

聴覚情報処理障害の方が利用できる支援

支援のイメージ

聴覚情報処理障害が原因で、「仕事が続かない」「働くことに不安がある」と悩む方は少なくありません。

聴覚情報処理障害は外見から分かりにくいため、周囲に理解されにくく、一人で負担を抱え込んでしまうケースもあります。

しかし、現在は働きづらさを抱える方に向けた就労支援制度や相談窓口も整いつつあります。専門機関へ相談することで、自分に合った仕事や働き方を見つけやすくなる場合があります。

ここからは、聴覚情報処理障害の方が利用できる主な支援制度や相談先について解説します。

医療機関・専門機関

「聞こえているのに聞き取れない」
「電話対応だけ極端に苦手」
「耳からの情報を覚えられない」

といった困りごとがある場合は、耳鼻咽喉科や専門の医療機関へ相談してみることが大切です。

医療機関へ相談することで、聞き取りづらさの原因や自分の特性を整理しやすくなり、必要な支援や対処法を考えるきっかけになります。診断書や意見書を書いてもらえる場合は、職場で配慮や調整を相談する際に活用できるでしょう。

また、聴覚情報処理障害だと思っていた症状が、発達障害や不安障害、うつ状態など、別の要因と関係しているケースもあります。

ただし、聴覚情報処理障害は、一般的な聴力検査だけでは分からない場合も少なくありません。聞こえ方の状態や困りごとの背景を整理するには、専門的な検査や評価が必要になることもありますが、聴覚情報処理障害を専門的に診断できる医療機関はまだ限られています。

専門的な検査や評価を希望する場合は、事前に対応可能か確認したうえで、AMED研究プロジェクト公式サイトなどで紹介されている医療機関情報を参考にするとよいでしょう。

参考:医療機関に相談するには|国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究プロジェクト公式サイト

障害者職業センター

障害者職業センターでは、障害のある方に向けた職業相談や就職支援を無料で受けることができます。障害者手帳の有無にかかわらず無料で利用できるため、聴覚情報処理障害による働きづらさがある方も相談先の一つになります。

障害者職業センターに相談することで、以下のような支援を受けることが可能です。

  • 職業評価
  • 職業準備支援
  • ジョブコーチ支援
  • 職場適応に関する支援

聴覚情報処理障害の方の場合、「どのような仕事環境が合っているのか」を客観的に整理したり、職場で必要な配慮について相談したりすることができます。

また、ジョブコーチ支援では、職場適応に課題がある場合に専門スタッフが職場に出向き、障害特性の説明や配慮事項の共有だけでなく、職場との調整を行う場合があります。

「自分だけでは職場へ説明しづらい」「どう相談すればいいか分からない」という方にとって、心強い支援になるでしょう。

参考:地域障害者職業センター|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

発達障害者支援センター・相談窓口

聴覚情報処理障害は、ADHDやASDなど発達障害特性と関連しているケースも指摘されています。そのため、発達障害に関する困りごともあれば、発達障害者支援センターで相談できる場合もあります。

「自分の困りごとをどう説明すればよいか分からない」

「職場でどのような配慮を求めればよいか分からない」

という段階でも、相談することができます。

発達障害者支援センターでは、主に以下のような相談や支援を行っています。

  • 生活相談
  • 就労相談
  • 福祉制度の案内
  • 医療機関の情報提供

特に、就労相談では聞き取りづらさによって仕事上どのような困難があるのかを整理し、職場で必要な配慮を考えるサポートを受けられる場合があります。

発達障害者支援センターだけでは対応が難しい場合でも、聴覚情報処理障害について相談できる医療機関や、さまざまな支援機関、自治体の福祉窓口につないでもらえる可能性があります。

聴覚情報処理障害はまだ社会的な認知度が高いとは言えず、「誰にも理解してもらえない」と感じて孤立してしまう方も少なくありません。しかし、専門機関へ相談することで、助けを得ながら、自分の困りごとや必要な支援を整理することができるでしょう。

参考:発達障害者支援センターとは|国立障害者リハビリテーションセンター

就労移行支援

就労移行支援とは、一般企業での就労を目指す障害のある方などを対象に、就職に必要な知識や能力を身につけるための訓練や就職活動をサポートする障害福祉サービスです。

就労移行支援などの障害福祉サービスを利用するには、自治体による支給決定が必要です。聴覚情報処理障害のみでは障害者手帳の取得につながりにくいケースもありますが、医師の診断書・意見書などで聞き取りづらさによる就労上の困りごとや支援の必要性を伝えることで、利用を相談できる場合があります。

就労移行支援では、以下のような就職に向けた幅広い支援を受けることができます。

  • 就職活動のサポート
  • ビジネスマナー訓練
  • パソコン訓練
  • コミュニケーション訓練
  • 職場実習
  • 履歴書や面接対策

聴覚情報処理障害の方の場合は、働きやすい環境や必要な配慮を一緒に整理しながら、自分に合った働き方を考えていける点が大きなメリットです。

また、就職後も職場に定着するための相談や支援を受けられる場合があり、実際に働き始めてから困ったことを相談できる環境があることも安心材料になります。

就労移行支援については、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:就労移行支援は障害者手帳なしでも利用できる!利用するための条件や方法を解説

就労継続支援A型・B型

就労継続支援とは、一般企業で働くことに不安がある方や、すぐに一般就労を目指すことが難しい方に対して、働く機会を提供する障害福祉サービスです。A型とB型に分かれており、雇用契約の有無や賃金・工賃の扱い、働き方が異なります。

就労移行支援と同様に障害福祉サービスであるため、利用には自治体による支給決定を受ける必要があります。

就労継続支援A型は、障害への配慮がある職場で、雇用契約を結んで働く障害福祉サービスです。
比較的軽作業や事務作業などが多く、体調や特性への配慮を受けやすいため、一般就労より負担を調整しやすいです。悩みや困りごとについても、支援員に相談できる体制が整えられています。

一方、就労継続支援B型は、雇用契約を結ばず、自分のペースで働くことを目的としたサービスです。勤務日数や作業時間を柔軟に調整しやすいため、まずは短時間から始めたい方や、リハビリ感覚で少しずつ働きたいという方にも利用されています。

聴覚情報処理障害の方の中には、疲労感が強く出やすい方や、長時間のコミュニケーションに負担を感じる方もいます。そのため、A型・B型は、支援員に相談しながら無理のない範囲で働く経験を積める環境として、選択肢になる場合があります。

将来的に一般就労を目指したい方にとっても、少しずつ働く準備を進めるきっかけになるでしょう。

WORK! DIVERSITY プロジェクト in 岐阜

WORK! DIVERSITY プロジェクト in 岐阜

「WORK! DIVERSITY プロジェクト in 岐阜」は、働きたい気持ちはあるものの、さまざまな理由から就労に不安や困難を抱えている「岐阜地域広域圏6市3町(岐阜市、羽島市、各務原市、山県市、瑞穂市、本巣市、岐南町、笠松町、北方町)」在住の方を対象に、就労支援を行っているプロジェクトです。就労系障害福祉サービスを活用し、一人ひとりの特性や困りごとに合わせたサポートを提供しています。

聴覚情報処理障害の方の中には、障害者手帳を取得していないため、利用可能な支援や相談先が分からないという悩みもあるのではないでしょうか。

WORK! DIVERSITY プロジェクト in 岐阜では、障害者手帳や障害福祉サービス受給者証を持っていない方を対象としているため、既存の障害福祉サービスの対象になるか分からない段階でも相談しやすい点が特徴です。

利用者は、就労移行支援事業所や就労継続支援B型事業所などで、自身の特性や体調に合わせた支援を受けることができます。聞き取りづらさによる仕事上の困りごとを整理したり、無理のない働き方を考えたりしながら、就労に向けた準備を進められます。

制度の対象になるか分からない方や、一般就労に不安がある方にとって、地域の支援につながるきっかけになるでしょう。

ご利用案内 | WORK! DIVERSITY プロジェクト in 岐阜

まとめ

  • 一般的な聴力検査では異常が見つかりにくく、聴覚情報処理障害のみを理由に障害者手帳の交付や障害福祉サービスの利用に直結しないケースがある。
  • 電話対応や口頭指示など、耳からの情報を扱う場面で困りやすい傾向がある。
  • 文字によるコミュニケーションが中心で、静かな環境の仕事が向いている傾向がある。
  • 向いている仕事としては、文字でのやり取りが多い仕事、一人で集中しやすい仕事、静かな環境で進めやすい仕事などが挙げられる。在宅勤務や柔軟な働き方ができる仕事も適している。
  • 働きやすくするには周囲の協力を得て、文字で指示を共有してもらうことやチャットツールの活用、静かな場所での作業など、配慮や調整をしてもらうことで働きやすくなる可能性がある。
  • 一人では対処法や向いている仕事が分からない場合は、医療機関、障害者職業センター、発達障害者支援センター、就労支援機関など、相談しやすい窓口から利用を検討するとよい

※今回紹介した内容は、仕事選びや働き方を考える際の一つの目安です。

聴覚情報処理障害は外見から分かりにくいため、周囲に理解されず悩んでしまう方も少なくありません。

しかし、働きづらさの原因を整理し、自分に合った仕事や職場環境を選ぶことで、負担を軽減できる可能性があります。自分の特性に合った対策を取り入れたり、職場に困りごとを共有して配慮を相談したりすることで、働きやすさを変えられる可能性があります。

一人で解決しようとせず、必要に応じて医療機関や今回紹介したような支援機関などに相談してみてください。自分に合った支援を受けながら、無理なく続けられる働き方を見つけていきましょう。


この記事に関するお問い合わせはこちらまで:workdiversitygifu@sus-sup.org

関連記事

TOP