「人と関わるのが怖い」という方にとって、誰かとコミュニケーションを取ったり人間関係を構築したりすることは大きなストレスになりますよね。就職活動に対する不安から、社会復帰に向けて一歩を踏み出せない方もいらっしゃるでしょう。
この記事にたどり着いたあなたは、
「人との関りが少ない仕事を探しているけど、オススメの業界って何?」
「対人恐怖症の人が受けられる就職支援はないのかな?」
このような悩みや疑問を抱えていませんか?
今回の記事では、対人恐怖症を抱えているあなたに向けて、
本記事では
- 対人恐怖症の方が仕事で困ること
- 対人恐怖症の方にオススメの仕事
- 対人恐怖症の方が利用できる就職支援
について解説していきます。
この記事が、対人恐怖症で悩んでいるあなたの社会復帰の一助となれば幸いです。
対人恐怖症とは?
対人恐怖症とは、人とのあらゆる関りに対して極端な不安や恐怖を感じるようになる精神疾患です。「対人恐怖症」は広く知られている言葉ですが実は正式な病名ではなく、病院などでは「社交不安障害」と診断されることが一般的です。
対人恐怖症の症状には以下のようなものがあります。
- 他者から注目されたり、評価や批判を受けたりすることを極端に恐れてしまう
- 他者と会話する時に声が出なくなったり、頭が真っ白になったりする
- 人と関わる時に赤面する、息苦しくなる、手足がしびれるなどの身体的症状が現れる
対人恐怖症になる原因は明らかではありませんが、「遺伝」「家庭や職場の環境」「過去の人間関係のトラウマ」など、様々な要因が関係して発症すると考えられています。
対人恐怖症は「自分に自信がない」「引っ込み思案」などの単なる性格の問題ではなく、発症すると人との関りを避けるようになります。そのため、社会的に孤立することで引きこもりになったりうつ病を併発したりするリスクが高まるのです。
一方で、治療には時間がかかりますが、対人恐怖症は薬物療法や認知行動療法によって症状の改善が期待できる精神疾患です。
以下では、対人恐怖症の方が仕事で直面しやすい困りごとについて見ていきましょう。
対人恐怖症の方が仕事で困ること3選
以下では、対人恐怖症の方が直面しやすい仕事での困りごとについて紹介していきます。対人恐怖症の症状には個人差が大きいため、仕事に与える影響も様々です。まずは、あなた自身が働いた時の姿をイメージしながら、困りごとを整理していきましょう。
面接が怖くて社会復帰できない
面接ではコミュニケーション能力や自己PRのスキルが求められるため、対人恐怖症の方にとって面接は大きな壁となりますよね。「働くことよりも面接が怖くて社会復帰できない」という対人恐怖症の方もいらっしゃいませんか?
実際に、対人恐怖症の方は
- 緊張すると声が震えたり出なくなったりする
- 相手の目を見て会話することができない
- 自分の考えを伝えたり自己PRをしたりすることができない
このような理由から面接に極端な苦手意識を抱えていることが多くあります。過去の就職活動にトラウマがある方であれば、なおさら面接が怖いと感じてしまうでしょう。
また、何度も不採用の結果を受けることで、
「自分は誰からも必要とされていないのか?」
「次の面接も失敗するのだろう…」
というネガティブな思考から抜け出せなくなってしまうこともあります。
対人恐怖症の方が面接に臨む際は入念に面接の対策や練習を行うほか、この記事でも後述する就労支援を利用して就職活動のサポートを受けることが大切です。
苦手な業務に直面してストレスを溜め込みやすい
対人恐怖症の症状は、以下のような業務で現れやすい傾向があります。
- 初対面の人とコミュニケーションを取る必要がある接客や営業
- 相手の表情が読み取れない状況でコミュニケーションを行う電話対応
- 会議やプレゼンテーションなどの人前で話す必要がある業務
- 上司への報告や相談、部下への指導などの業務
もっとも、プログラマーや工場作業などの人と関わることが少ない仕事もありますが、このような仕事でも最低限の対人スキルは求められてしまいます。
対人恐怖症によって円滑なコミュニケーションが取れなければ、
- 職場で孤立して働きづらさを感じてしまう
- 能力を適正に評価してもらえない
- 部署異動や転勤などのタイミングで業務内容とのミスマッチに直面しやすい
このような状況でストレスを溜め込みやすく、うつ病を発症したり短期離職をしたりするリスクが高まるのです。
そのため、対人恐怖症の方は治療を受けて症状の改善に取り組みながら、症状の程度に合わせて仕事を選ぶことが大切です。
職場の人に相談しても理解されにくい
対人恐怖症は、症状の深刻さが周囲から理解されにくいため、適切なサポートを受けられないことがあります。
対人恐怖症を抱えている方は、人と関わることに対してコントロールできない不安や恐怖に襲われることがあります。しかし、対人恐怖症の症状は表面的には判断しにくいものであり、相談しても周囲の人は単なる「あがり症」「人見知り」といった軽い症状として捉えてしまいがちです。
対人恐怖症は「慣れの問題」「頑張れば治る」という考え方が未だに根強いことが、相談しても理解されにくい原因となっています。その結果、誰にも相談できずに問題を1人で抱え込んでしまいやすくなるのです。
対人恐怖症の方にオススメの仕事4選
対人恐怖症の症状は仕事において困りごとに直面するきっかけとなることもありますが、適切な仕事選びができるとストレスなく働くことも可能です。
また、対人恐怖症の方は人と関わることが苦手な反面、
- 1人で作業している時間が苦にならない
- 自立性が高く、何事も相談するより調べて自己解決することが多い
このような強みを持っていることもあるでしょう。
以下では、対人恐怖症の方にオススメしたい仕事について紹介していきます。
オススメとされている仕事には、主に以下の4つがあります。
1. プログラマー
2. 工場勤務
3. 配達・運搬業
4. 事務職
順に解説いたします。
プログラマー
IT人材の価値が高まりつつある昨今では、プログラマーは対人恐怖症の方に特にオススメできる仕事です。
プログラマーの仕事の多くは1人で黙々と行う作業が多く、コミュニケーション能力よりもスキルが重視されやすい傾向があります。また、仕事ができる環境さえ整っていれば場所や時間に縛られずに働けるため、在宅ワークなどの自由な働き方を実現しやすい点も特徴的です。
また、現在はプログラミング関連の書籍が豊富に出版されており、youtubeなどには無料で視聴できるプログラミング講座なども多いため、わからないことを調べて自己解決しやすい仕事となりつつあります。
昨今では、就労移行支援などの就労支援サービスでプログラミングを無料で学ぶことができる環境もあるため、プログラマーは対人恐怖症の方でも目指しやすい業種です。
工場勤務
工場勤務では、マニュアルや指示に従って機械操作や製品の組み立て・検品など、1人で黙々と作業を行うことが多い仕事です。同僚とのコミュニケーションが発生しにくく、来客対応や電話対応もほとんど求められないため、対人恐怖症の方にとって働きやすい職場であることが多いです。
コミュニケーションを取る相手は作業チームのメンバーや上司などが中心となるため、知らない相手と話す機会が少ない点もストレスの軽減に繋がるでしょう。
長い時間集中を持続させることが求められる仕事ですが、対人恐怖症の方にオススメしやすい業種です。
配達・運搬業
車やトラックを運転して荷物を目的地まで届ける配達・運搬業は、サービス業ではありますが人との関りが限定的であり、発生するコミュニケーションもテンプレート通りの会話が中心となる仕事です。また、昨今では一般的となりつつある「置き配」や「ボックス配達」の登場によって、人と関わる機会はさらに減少傾向にあります。
配達のルートや荷物の積み下ろしなどの業務は定型的であることが多いため、慣れれば働きやすい仕事であるという特徴があります。
体力に自信があり車の運転がストレスにならないのであれば、対人恐怖症の方にオススメしやすい業種です。
事務職
事務職は、書面作成・データ入力・スケジュール管理などのルーチンワークが中心となる仕事です。オフィス内での業務が中心となるため、会社によっては対人恐怖症の症状に対して配慮を受けやすい特徴もあります。
電話対応や窓口での来客案内などの業務を任されることもありますが、苦手な業務については同僚にフォローを求めやすい点も大きなメリットでしょう。
一方で、オフィスワークでは人員の配置変更などの影響を受けやすい場合があり、対人恐怖症の症状によっては社内で孤立してしまうリスクがある点に注意が必要です。
対人恐怖症の方が利用できる就職支援4選
ここからは、対人恐怖症の方が利用できる就職支援サービスについて紹介していきます。
対人恐怖症の方が1人で就職活動を進めるのは非常にハードルが高いことかと思います。そのような時は、以下で紹介している就職支援の利用を検討ください。
受けられる支援は、主に以下の4つがあります。
1. 就労移行支援
2. 就労継続支援A型
3. 地域若者サポートステーション(サポステ)
4. 障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
順に解説いたします。
就労移行支援
就労移行支援とは、あらゆる障がいや難病を抱える方を対象に、一般企業へ就職するために必要なスキルを身に着ける訓練を行い、就職活動の全面的なサポートを行う就職支援サービスです。
主治医の診断書などがあれば障害者手帳を取得していなくても、就労移行支援を利用することができます。
対人恐怖症の方が就労移行支援を利用することで、
- 対人恐怖症の治療を進めながら就職活動が行える
- 対人恐怖症について自己理解を深めながら、自分に合った仕事を探せる
- 就職後も職場に定着するまでの支援を受けられる
このようなメリットがあります。
就労移行支援の事業所は全国に3000件以上あり、実際に対人恐怖症の方の就職を支援した実績を持つ事業所も数多くあります。人と関わることへの苦手意識を少しずつ改善させながら、段階的に社会復帰を目指したい方にオススメの就職支援サービスです。
ただし、就労移行支援では利用にあたり給与などは発生しないため、就職するまでの期間の生活手段を確保しておく必要があります。
就労継続支援A型
就労継続支援A型とは、あらゆる障がいや難病を抱える方を対象に、一定の配慮を受けられる職場で働く機会を提供する就職支援サービスです。雇用契約を結ぶため最低賃金が保証されており、月の平均給与額は約8万円となっています。
就労移行支援と同様に、主治医の診断書などがあれば障害者手帳を取得していなくても利用することができます。
就労継続支援A型では対人恐怖症の方に向けて、
- 在宅ワークが可能(事業所によって異なります)
- 日々のコミュニケーションの量や手段についての調整
- 対人接触が少なく適性がある業務の割り当てを行う
このような配慮への取り組みが行われています。
対人恐怖症の症状が深刻な場合、すぐに就職活動を始めたり正社員として就職したりすることが難しい場合もありますよね。就労継続支援A型は、このような方が障がいに理解のある環境で働きたいと考えた時にオススメしたい就職支援サービスです。
ただし、一般企業への就職支援は就労移行支援ほど手厚くない点に注意が必要です。
地域若者サポートステーション(サポステ)
地域若者サポートステーションとは、現在仕事をしていない15歳~49歳までの方を対象に、働くことに対する悩みを解決しながら就職をサポートする目的で設置されている厚生労働省委託の就職支援機関です。
サポステは障がいを抱える方の就職支援を専門とする機関ではありませんが、
- 初対面の人と上手に会話する方法
- 上手なストレスの発散方法
などの対人恐怖症の方にも役立つ講座が開催されています。
サポステでは長い時間をかけて丁寧な面談や就職相談を受けられるため、
- 働くことよりも就職活動が怖い
- 対人恐怖症と付き合いながら働ける仕事を見つけたい
- 自信を持って就職活動を行うための準備がしたい
このように考えている対人恐怖症の方にオススメしたい就職支援です。
いきなりハローワークへ行くことに不安がある方は、まずはサポステを利用してみると良いでしょう。
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
障害者就業・生活支援センターとは「なかぽつ」という通称で親しまれており、就職支援の実施みならず福祉窓口や医療機関などと連携して、障がい者が自立した社会生活を送れるように支援している機関です。
なかぽつでは、就職先の斡旋や就職活動のサポートの実施はもちろんのこと、
「対人恐怖症の自分は障害年金を受給できるのか?」
「対人恐怖症によって外出することが難しく、生活力が低下している…」
などの経済面や生活面の困りごとを相談することもできます。
なかぽつを利用するにはセンターに登録を行う必要がありますが、就職活動に限らず今後の生活に不安を抱えている対人恐怖症の方は、一度なかぽつに連絡してみると良いでしょう。
まとめ
まとめ
- 対人恐怖症とは、人前で話したり初対面の人と接したりする場面のみならず、あらゆる人との関りが怖いと感じるようになる精神疾患である
- 対人恐怖症の方は、働くことよりも面接が怖くて社会復帰に踏み出せないことがある
- 対人恐怖症の症状は周囲から理解されにくいため、職場内で適切な配慮が受けられずに働きづらさを感じてしまうことがある
- 一般的に対人恐怖症の方には、コミュニケーション能力よりも技術や専門性が評価されやすいプログラマーの仕事がオススメされる
- 工場勤務や運送業、事務職など、個人作業が中心となりやすい仕事もオススメしやすい
- 対人恐怖症の方が社会復帰に不安を感じている場合、「就労移行支援」「就労継続支援A型」「サポステ」「なかぽつ」のような就労支援を頼ることが大切
今回の記事では、対人恐怖症で人と関わるのが怖いという方に向けて、オススメの仕事や利用できる就職支援について紹介しました。
対人恐怖症とは、本人の「甘え」や「努力不足」が原因で発症するものではありません。医療機関での適切な治療と合わせて、あなた自身のペースで一歩ずつ社会復帰に向けて進んでいく事が大切です。
岐阜市在住で、人と関わることに不安を感じ、働きづらさを抱えている方は、「WORK! DIVERSITY プロジェクト in 岐阜」がご利用できます。障がい者手帳がなくても就労支援が受けられますので、まずはこの支援制度を活用してみてはいかがでしょうか。
詳しくは、下記ページをご覧ください。
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