
「最近、めまいや動悸がして仕事がうまくいかない…」
「こんな些細な症状で休むなんて甘えかも…」
過度なストレスなどが原因で自律神経が乱れ、様々な症状を引き起こす状態を「自律神経失調症」と言います。
それにもかかわらず、その不調を「自分の甘え」や「気合が足りないせい」だと片付けて、無理をしようとしていませんか?
あなたにとってはちょっとした体調不良でも、心と体は「もう休みたい」と必死に訴えているかもしれません。
本記事では
- 自律神経失調症の症状と仕事への向き合い方
- 「仕事を辞めたい」と感じた時の選択肢
- 療養中の過ごし方と回復に向けた働き方とは?
- 休職や退職時に利用できる支援制度
を解説します。
あなた自身の現状を見直し、それに適した選択肢を知って、つらさから抜け出すための最初の一歩を見つけましょう。
「仕事がつらい」のは自律神経失調症のせい?見逃せないサイン

仕事や生活で目まぐるしく過ぎる毎日の中で、「仕事がつらい」と感じてしまうのは自然なことです。
しかし、ただ「つらいな」と思うだけでなく、心身に不調が現れるなら、それは十分な休息が必要な「限界」に達している可能性があります。
自律神経失調症に限らず、ストレスのサインに気が付くことは、自分を守るために重要なことです。これから紹介するサインに心当たりがないか、最近の働き方と体調を思い出しながら、自分自身と向き合ってみましょう。
身体のストレスサイン
朝起き上がれない、日中のめまいといった身体の不調は、自律神経が乱れている典型的なサインです。
こうした症状は一見軽い不調に思えますが、集中力の低下や疲労の蓄積を招き、「以前のように仕事が進まない」と感じる原因になることもあります。
以下のような不調が続いていないか、一度振り返ってみましょう。
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- 肩こりや頭痛、腹痛、腰痛などの痛みが出てくる
- 寝つきが悪くなったり、夜中や朝方に目が覚める
- 食欲がなくなって食べられなくなったり、逆に食べすぎてしまう
- 下痢したり、便秘しやすくなる
- めまいや耳鳴りがする
引用:ストレスのサイン|ストレスとうまくつきあう|ストレスとこころ|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省
心のストレスサイン
理由もなく落ち込んだり、これまで楽しめていた趣味に興味がなくなったりするのは、心が助けを求めているサインです。
身体の不調よりも気付きにくいため、甘えや気の持ちようだと思い込んでしまいがちですが、こちらも仕事への意欲や集中力に大きく影響します。
以下のような変化が出ていないか、チェックしてみてください。
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- 不安や緊張が高まって、イライラしたり怒りっぽくなる
- ちょっとしたことで驚いたり、急に泣き出したりする
- 気分が落ち込んで、やる気がなくなる
- 人づきあいが面倒になって避けるようになる
引用:ストレスのサイン|ストレスとうまくつきあう|ストレスとこころ|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省
自己判断は禁物|心の病気の可能性も
これらのサインに複数当てはまる場合でも、「自分は自律神経失調症だ」と自己判断することは避けてください。
自律神経失調症とは、特定の病気を指す正式な病名ではなく、ストレスなどが原因で自律神経のバランスが崩れ、さまざまな症状が現れる「状態」の総称です。
そのため、同じような症状でも、背景にはうつ病や適応障害、パニック障害といった、専門的な治療や休養が必要な他の病気が隠れているケースも少なくありません。
今後、仕事を続けるか休むか、あるいは環境を変えた方が良いかを考えるためにも、まずは自分の心身がどのような状態にあるのかを客観的に知ることが重要です。
日常生活に支障が出ている場合は、まずは心療内科や精神科を受診しましょう。それが、これからの働き方を判断するための土台になります。
自律神経失調症で「仕事を辞めたい」と思った時の3つの選択肢

心身のサインに気づいたとき、「もう仕事を辞めたい…」という気持ちが頭をよぎることがあるでしょう。
そう思うことは、決して間違いではありません。限界を感じたときは、無理に働き続けるのではなく、一度立ち止まって戦略的に自分の身の振り方を考えることが重要です。
ここでは、あなたが取れる具体的な3つの選択肢を紹介します。
仕事を休み、治療に専念する
まずは心身の回復を最優先に考え、「休職」を検討しましょう。
限界の状態で働き続けるとパフォーマンスは低下するだけでなく、症状を悪化させる恐れもあります。休職で仕事から一度距離を置き、根本的な回復を目指すのも一つの選択肢です。
休職をするには、医師から「休養が必要である」という内容の診断書をもらい、会社に提出するのが一般的です。そのため、早めに医療機関を受診しておくことが重要になります。
休職が決まったら、通院やカウンセリングを受けながら、まずはゆっくりと心身を休ませることに集中しましょう。
仕事をやめ、新しい道を探す
現在の職場環境そのものが不調の大きな原因だと感じるなら、「退職」して環境を変えることも選択肢の一つです。
休職しても、同じストレス環境に戻ることで症状が再発してしまうケースは少なくありません。仕事を辞める決断は、自分に合った働き方や環境を見つけるきっかけになる場合もあります。
ただし、退職は大きな決断です。必ず医療機関を受診し、医師とよく話し合って今後の仕事との向き合い方を決めましょう。
働き方を変え、今の会社で負担を減らす
「休む」「辞める」という大きな決断の前に、現在の会社に在籍したまま「働き方を変えてもらう」という選択肢もあります。
会社や上司に理解があれば、部署異動や業務量の調整など、あなたの負担を軽減するための配慮をしてもらえる可能性があります。これにより、休職や退職による収入減や、転職活動のストレスといったリスクを避けながら、心身の回復を図ることが可能です。
まずは会社の産業医や人事部、信頼できる上司に相談してみましょう。
仕事復帰の不安を減らす!療養中の過ごし方のヒント

いざ仕事を休むとなっても、「一日中、何をすればいいんだろう…」「何もしないでいると、社会から取り残されるようで焦る」と、新たな不安を感じてしまうかもしれません。
しかし、焦りは禁物です。回復のステップに合わせた上手な過ごし方を知ることで、「今はこれでいいんだ」と思えるようになり、気持ちを落ち着けることにつながります。
STEP1:まずは何もしない。自分のペースで生活習慣を整える
療養の最初のステップは「何もしないこと」を徹底し、乱れた生活習慣を整えることに集中してください。
食事は3食決まった時間に取り、日中はカーテンを開けて太陽の光を浴びます。それだけでもできれば十分です。ソファで横になって、ぼーっと過ごすのも良いでしょう。
無理に何かをしようとすると、回復が遅れるだけでなく、かえって症状を悪化させることになりかねません。まずは心と体を休ませ、エネルギーを補充することが最優先課題です。
STEP2:罪悪感は不要、好きなことをして心に栄養を与える
少し気力が湧いてきたら、「休んでいるのに楽しんでいいのかな?」という罪悪感を捨てて、好きなことに時間を使ってください。
趣味に没頭しても良いですし、どこかに出かけてみるのもリフレッシュになるでしょう。仲の良い友人や家族がいるなら、一緒に過ごす時間を作ることもストレス解消につながります。
療養中に楽しむことは、治療の一環であり、決してサボりではありません。むしろ、積極的に心に栄養を与えるべきです。
STEP3:新しい始まりに向けて「自分の本当の気持ち」と向き合う
心に余裕が出てきたら、なぜ自分がつらくなってしまったのか、自分の「本当の気持ち」と向き合う時間を作りましょう。
根本的な原因を理解しないまま復職・転職をすると、同じことの繰り返しになる可能性があります。この機会に自分を見つめ直すことで、今後のキャリアで同じ悩みを繰り返さないための「自分だけの取扱説明書」を作ることができるのです。
例えば、ノートとペンを用意して、以下の質問に答えてみましょう。
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- 仕事の何が一番つらかった?(業務量、納期、人間関係など)
- 逆に、仕事で楽しかったこと、やりがいを感じたことは?
- どんな働き方なら、無理なく続けられそう?
- 将来、どんな自分になっていたい?
これは将来のための準備でもありますが、自分の気持ちを紙に書き出すことは、思考整理やストレス解消にもなります。
最初はきっちりと書けなくても良いので、とにかく自分の思ったことをアウトプットしてみてください。
STEP4:余裕があれば、将来のための軽いインプットを始める
復帰への意欲が自然と湧いてきたら、あくまで「無理のない範囲」で、将来のための軽いインプットを始めてみましょう。
これは、社会とのつながりを少しずつ取り戻し、「自分はまだやれる」という感覚を取り戻すためのリハビリです。興味のある分野の本を読んだり、転職サイトを眺めてみたり、できることから始めてみましょう。
ただし、義務感でやると逆効果になるため、「楽しい」と感じる範囲に留めることが絶対条件です。
自律神経失調症でも仕事ができる!おすすめの働き方3選

療養を経て、いざ次のステップを考え始めたときに大切なのは、以前のあなたと同じ働き方を目指すのではなく、「今の自分」に合った、心身に負担の少ない働き方を選ぶことです。
ここでは、自律神経失調症の症状と上手に付き合いながら、あなたのキャリアを再構築していくためにおすすめの働き方を3つ紹介します。
フルリモート勤務
通勤の負担やオフィスでの刺激を避けられる「フルリモート勤務」は、負担を減らしやすい働き方の一つと言えます。
自宅という安心できる環境で働くことで、職場でのストレス要因をなくし、自分のペースで仕事に集中しやすくなります。
フルリモート勤務には、以下のようなメリットがあります。
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- 通勤による疲労や体調悪化のリスクがなくなる
- 自分が最も集中できる環境を自由に作れる
- 少し疲れたら、誰の目も気にせず休憩ができる
- チャットやWeb会議が中心のコミュニケーションで、気疲れを減らせる
フルリモート勤務は、体調に左右されやすい方でも、仕事のリズムを保ちやすいです。通勤や職場環境による負担を減らすだけでも、心身に余裕が生まれ「働き続けられる」という実感を少しずつ取り戻せる可能性があります。
フレックスタイム制
日によって体調の波がある方には、始業・終業時間を自分で調整できる「フレックスタイム制」がおすすめです。
自律神経失調症の症状は、時間帯によって変動することがあります。そのため、体調が良い時間に集中して働き、つらい時間帯は休憩や休息に充てるという柔軟な働き方が向いている場合があります。
フレックスタイム制を活用すれば、以下のような働き方が実現できます。
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- 朝の不調が強い日は、11時からのゆっくり出社にする
- 比較的元気な午前中に集中して作業を進め、午後はペースを落とす
- 通院の日は、中抜け制度を利用して業務時間中に病院へ行く
フレックスタイム制を取り入れることで、決まった時間に合わせなければならないというプレッシャーから解放されます。体調の波を前提に働ける環境は、無理を重ねずに仕事を続けていくための、大きな支えになるでしょう。
フリーランス
仕事の量、時間、場所、そして人間関係をすべて自分でコントロールしたいと考えるなら、「フリーランス」として独立する道も有力な選択肢です。
会社組織に属することで生じる様々なストレスから解放され、自分の裁量で仕事を進められるのが最大のメリットです。自分の体調を最優先した働き方を、誰に遠慮することなく実現できます。
フリーランスという働き方には、以下のようなメリットがあります。
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- 働く時間と場所を自由に決められる
- 通院などの予定を気兼ねなく入れることができる
- 自分の心身の状態に合わせて仕事量を調整できる
- 自分の得意分野や「やりたい」と思える仕事に特化できる
すぐに独立を目指す必要はありません。しかし、このように会社に属する以外の働き方があるということを知るだけでも、将来の選択肢を冷静に考えられるようになります。
治療と仕事を両立させる3つのコツ
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「すぐに休職や退職に踏み切るのは難しい…」
「もう少しだけ、今の職場で頑張ってみたい」
様々な事情から、今の仕事を続けながら回復を目指したいと考える方もいるでしょう。
ここでは、治療と仕事を両立させるための、心を守る働き方のコツを3つお伝えします。
完璧主義を手放す勇気を持つ
まず取り組むべきは「100点を目指さない」と決め、完璧主義を手放す勇気を持つことです。
真面目で責任感の強い人ほど、「常に完璧でなければならない」というプレッシャーを自分自身に課してしまいがちです。
しかし、心身が不調なときに100%の力を出すのは不可能です。この完璧主義が、あなたをさらに追い詰める原因になります。
「8割できれば上出来」「他人の評価を気にしすぎない」「一人で抱え込まない」といったことを意識し、まずは自分に優しく接しましょう。
「ここまでやったら休む」と決める
仕事のタスクを細分化し、「ここまで終わったら必ず休む」というルールを決めておきましょう。
集中力が続かない状態で長時間作業をしても、効率が上がらないばかりか、心身の疲労を増大させるだけです。
人間の集中力は元々長くは続きません。意図的に短い休憩を挟むことで、結果的に1日の生産性を維持し、心身の消耗を防ぐことができます。
例えば、「25分間作業して、5分間休む」というサイクルを繰り返す、「ポモドーロ・テクニック」がおすすめです。タイマーなどを使用して、実践してみましょう。
上司や同僚に相談する
勇気を出して、信頼できる上司や同僚に自分の状況を打ち明けることも検討してみてください。
状況を正直に伝えることで、周囲の理解を得られ、業務上の配慮をしてもらえる可能性が高まります。
「最近、めまいの症状があり、長時間モニターを見ていると集中力が途切れてしまいます。可能であれば、1時間に5分ほど目を休める時間をいただけないでしょうか」と、気になっている症状と、どうしてほしいのかを具体的に伝えると効果的です。
口頭でうまく説明できるか不安であれば、症状や希望などを整理したメモを用意しておくと、スムーズに内容を伝えられます。
仕事を休む・辞めるときに使える支援制度

仕事を休んだり辞めたりする決断をするとき、最も大きな壁となって立ちはだかるのが「お金の不安」です。
しかし、心配はいりません。いざというときにあなたを支えてくれる支援がきちんと用意されています。ここでは、あなたが利用できる代表的な制度を紹介します。
休職する場合は「傷病手当金」
健康保険の被保険者が病気やケガで仕事を休む場合、「傷病手当金」を受給できる可能性があります。
これは療養中の生活を保障するため、加入する健康保険から給与の一部が支給される制度です。会社から給与が出ない期間も収入がゼロになるのを防ぎ、安心して治療に専念できます。
対象は会社の健康保険に加入している本人で、支給額は給与(標準報酬月額)のおおよそ3分の2が目安です。
支給期間は、支給開始日から通算して最長1年6ヶ月です。 申請には医師と会社の証明が必要なため、まずは会社の担当部署(人事・総務など)か、加入している健康保険組合に相談してみましょう。
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会 協会けんぽ
退職する場合は「失業保険(雇用保険)」
会社を退職後、働く意思と能力があるにもかかわらず仕事に就けない場合、「失業保険(雇用保険の基本手当)」を受給できます。
これは失業中の生活を支え、再就職活動に専念するための国の制度です。申請はお住まいの地域を管轄するハローワークで行います。
ただし、すぐに働けない場合、その間は失業保険を受給できません。回復後に受給を開始できるよう、受給期間の延長手続きを行いましょう。この手続きは、原則として「離職日の翌日から30日経過後、受給期間満了日まで」に行う必要があります。
参考:雇用保険手続きのご案内|ハローワークインターネットサービス
WORK! DIVERSITY プロジェクト in 岐阜

退職した方の中で今後の働き方について一人で悩んでしまうときは、就労支援の専門機関に相談するという選択肢もあります。
「WORK!DIVERSITY プロジェクト in 岐阜」では、「働きたくても働けない」「体調の不安から、次の一歩を踏み出せない」といった悩みを抱える岐阜市民の方を対象に、就労支援を行っています。
利用にあたり、障害者手帳などは必要ありません。自律神経失調症の症状で働くことが難しい方であっても、「働きたい」という思いがあれば利用することが可能です。
このプロジェクトでは、岐阜市内の「ダイバーシティ就労支援拠点」である就労移行支援事業所や就労継続支援事業所で、体調と相談しながら働く準備や仕事の経験を積むことができます。
体調に波があり、「調子の良い日」と「つらい日」の差が大きい自律神経失調症の方にとって、こうした支援は無理なく社会とつながり直すための土台になります。
心身の回復を大切にしながら、社会復帰に向けた一歩を踏み出すための選択肢として、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ|自律神経失調症で仕事がつらい時の選択肢と働き方のヒント
まとめ
- 見過ごしがちな心身の不調は、決して甘えではなく限界を知らせるサイン
- 仕事がつらいと感じたときの「休む」「辞める」という選択肢は、心と体を守る賢明な判断
- 療養中は焦らず自分のペースで過ごすことで社会復帰の不安を減らすことができる
- 「フルリモート勤務」「フレックスタイム制」「フリーランス」など、自律神経失調症でも安心して仕事ができる働き方がある
- 周囲に相談したり、自分に負担をかけない思考を意識したりすることで、今の職場でも治療と仕事を両立することができる
- 仕事を休職・退職する際に使える「傷病手当金」「失業保険(雇用保険)」などの支援制度がある
自律神経失調症と向き合いながら働くことは、決して簡単なことではありません。思うように体が動かず、不安や焦りを感じてしまう日もあるでしょう。
それでも、無理をしない選択を重ねていくことで、自ずと続けられる働き方が見えてきます。仕事を休んだり誰かに相談したりすることも、回復へ向けた大切な第一歩です。
あなたのペースで、あなたらしい働き方を見つけていくためのヒントとして、この記事が次の一歩を考えるきっかけになれば幸いです。
この記事に関するお問い合わせはこちらまで:workdiversitygifu@sus-sup.org